花粉症とつきあう

今年は杉花粉の飛散量が多い。毎年のことだけれどこの時期は本当に辛い。花粉症の症状が現れてからもう40年ほどになるが、「極めて多い」「非常に多い」と予報が出ると、その通りに身体が反応する。服薬と点眼薬で何とか乗り切っているが、恒例のことと諦めている。治療法は進化しているようだが、それほど改善されたと感じることはない。おそらく花粉症とのつきあいは一生続くのだろう。

 人間の立場から見ると、花粉症の原因になる杉や桧は悪ということになるが、植物にとっては花粉を風に乗せて運ぶのは、繁殖のための自然な営みでしかない。生態系のなかで見れば、季節ごとに現れる環境の変化であり、あらゆる生物同様自然環境で生じる姿だ。

 もっとも、大昔には花粉症などなかったようで、植林とその後の森林行政とも深く関わっているようだ。長年の大気汚染や地球の温暖化も花粉症の大きな要因になっている。日本の杉林は大半が人工的なものであり、花粉症の原因は人間がつくり出してきた面もある。杉の声が聴こえるなら、今更言われても、だろう。それに杉は二酸化炭素の吸収率が高いようで、温暖化を少しでも抑える役割も担っている。簡単に伐採してしまえば、山林の崩壊や水害を招く。

 地球の温暖化は歯止めがかからない。頻繁に起こるようになった風水害や雪害は、つまるところ、生態系を壊してきた人間の欲望と傲りからきているとも言える。

 杉林は、人間にとってただの客体ではない。多種多様な動物や植物が生息している同じ自然環境にある。人間も自然の一部でしかない。杉花粉だけを問題にする前に、杉林と人間の間で生じていることと、そこに関連づくさまざまな事象と結びつけて見ることも必要だろう。守らなければならないはずの人間を含む生物の生態系は一層危うくなっている。世界各地で起こっている大規模な自然災害と戦争による破壊は無関係ではないはずだ。日々流れてくるニュースの映像を見ていると考えさせられる。

 花粉症など、いくら辛くてもつきあえる範囲のものかもしれない。2ヶ月ほどのことだ。その先のことを考えたい。