Jリーグ天皇杯、一瞬のドラマ

Jリーグ天皇杯、浦和レッズの優勝にしびれた。見逃していたらどれほど後悔していたことか。
スタジアムに足しげく通う熱烈なレッズファンではないが、ブッフバルトが現役選手のころからレッズを応援してきた。
ただここ最近はすっかり選手が入れ替わり、90分テレビで観ることが少なくなっていた。それでも天皇杯決勝は楽しみにしていたし是が非でも勝ってほしかった。阿部選手、槙野選手、宇賀神選手のレッズでの最後の試合でもあった。

後半70分を過ぎたころは、いつものレッズのパターンかと冷や冷やしながら観ていた。同点に追いつかれ、負けるかもしれないと不安な気持ちが過った。同点になったときには、やっぱりと思ってしまったが、そんな気持ちを一瞬にして覆してくれたのだから観ている方としてはたまらない。

まるで演出したような展開と結末、こんなことが起こるのだと驚きながらも、やっぱりという気持ちにもなった。今年限りで退団する槙野選手のゴールが劇的な勝利を呼び込んだ。興奮さめやらぬ面持ちでしばらく余韻を愉しむことができた。
スポーツ観戦の醍醐味であり、楽しみでもあるが、プロスポーツはこうでなければとも思う。

物語は偶然には生まれない、幾つかのピースがうまく組み合わさったとき勝利の女神が微笑む。槙野選手だからこそだ。技術はもちろんだが、卓越した創造力と感性が生んだゴールだと思う。
ゴールキーパーの西川選手とことばを交わしたというが、彼の中では一連の流れを想像していたのだろう。常にうまくいくとは限らないが、ピースを組み合わせる条件は整っていた。極上の物語を完結させるための環境をつくり出せるのが槙野選手、誰もができることではない。

プロスポーツには物語をつくり出せる選手は貴重だ。技術や戦略を超える創造力がある、いつまでも記憶に残る選手に共通しているように思う。

インタビューのとき槙野選手は泣かなかった、笑顔を絶やさず若い選手たちにエールを送っていた。退団が決まったとき相当落ち込んでいたそうだから、こちらの方が泣けてきた。
選手の評価とはなんだろうと思う、槙野選手が退団してしまうことがもったいないと思う。一ファンとしてはやるせない気持ちになる。

インタビューを聞きながら2009年に退団した闘莉王選手のことを思い出した。あの時も何とも切ない気持ちにさせられた。