「クラシック倶楽部」 — 見えないものと見えるものを愉しむ

最近、「クラシック倶楽部」を愉しんでいる。「クラシック倶楽部」は、平日の早朝5時から6時までNHK BSプレミアムで放送されている。
 この番組を知ったのは今年になってからだが、これも朝ゆっくり過ごすことができるようになったからだろう。録画したものを朝食をとりながら聞いている。終了時間がコーヒーを飲み終えるころで、清々しい気持ちで1日がはじまる。

 その日の出演者と演奏が楽しみになり、気に入ったものは残し、何度も聴いているものもある。室内楽とソロの演奏が中心で、若い演奏家も頻繁に登場する。海外を拠点にして活動している若い演奏家がとても多いこともはじめて知った。
 今年のショパンコンクールで2位の反田恭平さん、4位の小林愛実さんもタイミング良く放送された。クラシック音楽に詳しい訳ではないが、同じ曲目でも演奏者によってこんなにも違うと好きなように比べてみるのも面白い。作曲家や曲目に対する解釈が入るのだからあたり前なのだが、演奏はその人の人柄も出るし、世代によって解釈の違いも出るようだ。

 反田さんはショパンをより深く理解するためにポーランドに留学したそうだ、ショパン博物館で使わなかった曲など楽譜や資料に触れることで、学んだことが多かったという。
 メモの入った手書きのオリジナルの楽譜から学ぶなど、原点を見つめ直そうとするのは最近の傾向のようだが、これはどの分野にも共通する。
 演奏の前に短いインタビューが入っていることで、演奏家の活動と考え方も伝わってくる。
 小林さんは、期待の重圧からピアノをやめようと思ったこともあるらしいが、自分自身が愉しむことを心がけたことで今に繋がったという。演奏者が愉しんでいれば鑑賞者も愉しめる。

 気に入って残したものを辿ってみると、どうも若い演奏家が多い。音楽に対するひた向きさや人柄に魅かれているのかもしれない。
 古典を現在に繋げようとするフォルテピアノの川口成彦さん、少年のように天真爛漫にインタビューに応える藤田真央さん、人柄と曲に対する想像力の豊かさをこちらも勝手に想像しながら愉しんでいる。
 REO(今野玲央)さんの筝曲も新鮮だった。バッハのバイオリン曲から現代音楽までとはばひろいが、ジョン・ケージのピアノ曲ドリームも筝の音色が異なった感覚で入ってくる。

 クラシックは演奏会かCDで聴くことになれ親しんできたが、テレビで視聴するのも悪くない。
 少し離れて見ながら鑑賞している方がいいのかもしれないが、映像からは感情の高まりやその人の人間性も伝わってくる。表情がアップで映し出されるテレビの映像ならではの愉しみ方ができる。演奏曲はもちろん、演奏者のパフォーマンスも身体表現として見ていて愉しい。
 演奏しているときどんな風景を想い浮べているのだろう、見つめている先に何があるのだろう、口の動きは心のつぶやき、それとも詞だろうか、と想像してみる。見えないものと見えるものを愉しんでいる。