11−オンライン・ワークショップ

 3月の初旬、オンライン・ワークショップをはじめて試みた。香川県塩江町でワークショップを行う予定だったが、首都圏は緊急事態宣言が解除されない状況で、出かけるのをあきらめた。オンラインで行うことも想定した計画を立てていたので、2日間を1日に変更して実施した。
 オンラインといっても個別の参加ではない。現地では人数を制限して会場で作業をしてもらうことになった。私は自宅から会場の様子を見ながら対話する方法を採ってみた。意外と面白いかもしれない、と思いつつも不安がなかった訳ではないが、結果的に満足できるものだったと思っている。
 会場では全体が映るカメラの他、機動性のあるスマートフォンのカメラと作品を映す書画台を使用し、切り替えながらの進行だった。
 参加者は、40代から60代の夫婦3組と20代1人、30代1人、計8名が参加した。夫婦3組の参加は珍しいことだと思うが、これもコロナ禍の影響だろうか。
 初対面であっても参加者との距離をそれほど感じることはなかった。不思議なことに、それぞれが自己紹介をはじめたときには、もう頭が切り替わっている。環境が変わっても、目的がはっきりしていれば順応できるものだ。
 私のパソコンのモニターには、参加者の顔も作品もはっきりと映し出される。目の前で対話する感覚はさほどズレを感じない。スクリーンにはプロジェクターで映し出された私の顔が常にあり、参加者も側にいる感覚が持てたという。個別に対話するときには、カメラに近づいてくる。作業中は緊張することもなく、かえって伸び伸び自由に描くことができたともいう。長年ワークショップを共にしたファシリテーターが現地で支えてくれたことも大きい。
 やり方次第でオンライン・ワークショップも悪くない。遠方であっても気軽に実施できることを考えれば、メリットも大いにある。可能性はまだまだありそうだ。要はその場所で展開されることに意義を見出せるかどうかだろう。
 これまでは作業する時間も十分とりながら、話し合うことを大切にしてきた。しかし、遠くから黙って眺めていても仕方がない。今回は対話することを重視し、多くの時間を割いた。課題もその前提で考えた。作業中はオンライン接続を切ることにし、午前、午後30分ずつ設けた。
共通の題材を設定し、それぞれが異なった観点からイメージし絵にしていく。共通していること、違っていること、意外な想定も見えてくる。参加者と私、参加者同士が言葉を交わしながら楽しもうという試みである。
 設定は、塩江町にある架空のペンションの室内。大きな窓とテーブル、椅子が共通の素材で、あらかじめプリントしたものを切り取って使用する。そこに本や手紙、ティーカップなど用意した素材を幾つか加える。いずれも馴染みのある場所ともので共通性を持たせている。
 ペンションを訪れた人を中心に物語を作っていくが、対話の時間を多くとることでイメージは膨らんでいく。塩江町が特定の場所であっても、暮らしぶりも日々考えていることも同じではない。窓は外と内の境界であり、関心の向け方も意味の与え方もさまざまだ。手紙や本をどう扱うか、想像力を働かせながらイメージのキャッチボールを楽しんでいる。
 床に窓を設定し、窓の向こうに時空を超えた世界を表現したもの、窓の外からテーブルや椅子、魚まで吸い込まれ飛び込んでくる表現など、ユニークで楽しい作品もあった。
午前10時から昼休みを挟んで午後3時まで、時の経つのを忘れるほど楽しい1日だった。